近年、ますます増え続ける温室効果ガスによって、2024年の地球の平均気温は、パリ協定(2015年)で合意した抑制目標値である産業革命前からの気温上昇幅「1.5度」を超え、今後もこの水準を上回るリスクが高いことを警告しています。温暖化によって引き起こされる気候変動は豪雨や大型台風などの異常気象をもたらし、人々の生活に大きなダメージを与えています。
そうした中で、現在、各産業においてカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)の実現が求められています。日本では2050年までのカーボンニュートラルを目標に掲げ、2030年までに温室効果ガスを46%削減するという中間目標も設定されています。特に建築物分野は、空調や設備使用で日本のエネルギー消費量の約3割を占めるといわれ、建設業界全体でCO₂削減が迫られています。
建設業における環境負荷低減を考えるうえでは、以下の4つがポイントだといわれます。
<建設業における環境負荷低減のポイント>
(1)建設資材の見直し
木材などの低CO₂排出建材や無機塗料など、環境負荷の少ない建材を選ぶ。
(2)現場での技術革新の活用
ICT建機やロボットを導入し、作業効率を高めてエネルギー消費や工期を短縮する。
(3)省エネルギー設計
自然採光や自然通風を生かした設計や屋上緑化、壁面緑化を推進する。
(4)廃棄物削減
建設リサイクル法に基づいた適切な分別処理を徹底する。
今回は上記の建設業界の環境負荷低減の取り組みの中で、「(1)建設資材の見直し」「(2)現場での技術革新の活用」に関する先進技術を紹介します。
従来の工法:鋼製・ステンレス製建具(ドア・窓)の製造は、古くから溶接組立で行われ、ねじによる組立や構造用両面テープなども活用されています。その一方で、接着剤が使われるケースもありましたが、これは各メーカーが独自に民間工事向けとして採用・運用していたものでした。
「公共建築工事標準仕様書」の改定: 2022年4月に改定された「公共建築工事標準仕様書」では、これまでの施工実績と品質を踏まえ、「接着剤を使った組立方法(以下、接着工法)」が新たに追加されました。これより公共工事にも対応可能となり、環境に優しく、工場での作業負荷軽減にもつながる「接着工法」による鋼製・ステンレス製ドア市場が今後拡大するとみられています。
《接着工法のメリット》
(1)環境負荷の低減(脱炭素・省エネ)
溶接の減少により、CO₂排出量(電力使用量)を削減可能。
(2)作業環境の改善
溶接ヒューム(有害ガス)や粉塵の発生がなくなり、作業環境が向上。
(3)作業効率の改善
溶接時にできる膨らみなどを研磨する必要がなくなる。
文化シヤッターでは、「接着工法」を用いて製造する環境配慮型スチールドア「SGD」を製造しています。「接着工法」は溶接や研磨不要のため、ドアの表面を傷めず、長寿命化が図れます。さらにドアの表面材に用いる鋼板の薄板化がもたらす軽量化も実現しています。このようにスチールドア「SGD」は、「接着工法」と「軽量化」により、環境負荷低減や作業環境の向上だけでなく、運搬時の負荷低減、使用者の操作性、使い勝手向上など、さまざまなメリットをもたらします。
また、ドア枠の施工には溶接作業を行わない「スマートアンカー」を用いた「無火気工法」で設置します。「スマートアンカー」はJIS A 4702に規定されている各種性能試験で、溶接と同等の強度を確認しています。
スチールドア「SGD」の設置に用いられている「無火気工法」とは、溶接の代わりにねじ止めで金具を壁に取り付ける施工方法のことです。これによりCO₂削減に加え、作業の安全性や効率の向上などのメリットを実現します。
《無火気工法のメリット》
(1)環境負荷の低減(CO2削減・省エネ)
溶接で使用していた電気使用量が減ることでCO₂の削減につながるため、サステナブル建築にも寄与。
(2)火災予防・安全性向上
火花や火炎が発生する溶接作業が不要となるため、施工現場での火災発生リスクを大幅に低減可能。
(3)作業環境の改善
溶接ヒューム(有害ガス)や粉塵の飛散がなくなるなど、作業環境が向上。
(4)作業効率の向上
ドア枠やシャッター枠の取付けをねじ止めだけで行えるため、作業効率が向上。
(5)高い信頼性
各種性能試験により、溶接と同等の強度と安全性が確認されている。
建設業界は、エネルギー消費量や廃棄物排出量が多いため、地球環境に負荷をかける部門の一つだと考えられています。だからこそ、環境負荷低減に取り組む意義や影響も大きいといえるでしょう。こうした取り組みは、企業のSDGs(持続可能な開発目標)の達成につながるだけでなく、新しい技術開発、サービス提供、企業価値向上などをもたらす可能性があることも見逃せません。今後はCO₂を貯蔵・削減するサステナブルな建築材料として「木」を活用した、大規模木造建築物が増加する見通しです。このことからも火気を使わない「無火気工法」の対応は急務であり、拡大していく見込みです。
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