近年、都市部では最高気温が40℃を超える日があり、天気予報などでは「猛暑日(35℃以上)」以上の危険性を伝えるため、「酷暑日」と呼んできました。2026年4月17日、気象庁はこれを正式な名称とすることを発表しています。
都市部の気温上昇には、ヒートアイランド現象が大きく関わっています。アスファルトやコンクリート、建物の外装材が日射熱を蓄え、夜間に放熱することで、都市全体の温度が下がりにくくなっています。加えて、空調や交通の排熱も重なり、都市の暑熱環境は年々厳しさを増しています。また、都市の気温上昇は集中豪雨の原因の一つともいわれています。
建築分野では従来、建物単体の屋根、外壁、開口部などの「外皮性能」が重視されてきました。しかし、これからは公開空地、駐車場、通路、広場を含めた、都市の表面を構成する「外皮性能」としての検討が求められています。
都市の「外皮性能」を考える時、建築関係者が注目すべきは単に温度を下げる技術ではなく、暑熱対策が「地域の価値を高める」という点です。
暑さは人の行動に直接影響します。例えば、夏場の昼間に日陰の少ない商店街やオフィス街では、回遊性が低下します。反対に、日射しを避け、風が通り、路面温度が抑えられた空間を、人は選んで歩き、滞在します。駅前広場、商業施設、オフィスエントランスなど、人が集まる場所や人が働く空間で、暑熱対策は「にぎわい」を左右する要素です。
また、建築物の遮熱・断熱性能を高めれば、空調負荷が下がります。それによりエネルギー使用量が削減され、ランニングコストの抑制にもつながります。さらに、働く人や利用者にとって、健康リスクの低減、生産性向上、施設利用率の上昇も期待できます。これからの都市において、涼しさは重要な価値となっていくでしょう。
ヒートアイランド現象と並んで、都市が直面しているもう一つの大きな課題が、集中豪雨や台風による浸水リスクです。
都市部では地表面の多くが舗装されているため、雨水が地中に浸透しにくく、排水能力を超えると一気に「内水氾濫」が発生する可能性があります。
地下街、地下駐車場、地下機械室、電気室、物流施設の搬入口、商業施設の出入口などは、浸水被害を受けやすい場所です。
一度浸水すれば、建物の機能停止だけでなく、設備更新や営業停止による大きな損失につながります。そのため、建築物のBCP計画においては、浸水対策として「水密性」の強化が欠かせません。特に重要なのは、建物の「どこで水を止めるのか」「どの機能を守るのか」を明確にしておくことです。
BCPに強い建物は、テナントにとって安心材料となり、施設の競争力向上にもつながります。また、脱炭素の観点からも、災害による設備損傷や建物機能停止を防ぐことは重要です。浸水被害による改修・廃棄・再調達は、大きな環境負荷を伴います。建物の長寿命化にも「水密性」の強化は欠かせません。
ヒートアイランド現象への適応は、「エコ&防災」を両立する都市のリノベーションを実現することです。それは一つの企業や一つの建物だけで完結するものではありません。都市全体の環境を改善するには、行政、大学、研究機関、民間企業、地域住民が連携し、継続的に取り組む必要があります。
大学や研究機関が持つ評価データや知見と、建築・建材・設備メーカーや設計者、施工者が有する技術や実装する力を合わせた「産学連携」による、10年後・20年後を見据えた都市づくりが期待されています。
【ヒートアイランド現象に適応する5つの視点】
・暑熱対策:今より暑い夏に対応できるか
・水密性の強化:今より強い雨に耐えられるか
・エネルギー対策:エネルギー価格の変動に強いか
・事業継続性:災害時にも事業を継続できるか
・地域貢献:地域の避難・滞在拠点として機能できるか
酷暑日や集中豪雨による危険が増す今日、適切な対策は一刻を争います。大規模な建て替えを行わなくとも、屋根・外壁・開口部・外構の改修により、
短工期で暑熱対策や水密性の強化ができるケースもあります。ぜひ今後の設計・施工の参考としてください。
■文化シヤッターグループのヒートアイランド対策 関連商品
・遮熱シート「はるクール」
アルミ箔を使用した遮熱シートが、輻射熱を反射することで建物内の温度上昇を抑えます。簡単施工で短納期が実現でき、後付けも可能。
耐久性に優れ、ランニングコスト低減にも大きく貢献します。
・浮力起伏式止水板「アクアフロート」
水の浮力だけで、自動で起立する起伏式止水板。電源不要で夜間や無人の施設での急な集中豪雨にも安心です。
最大止水高さ2000mm、浸水防止性能最高ランクのWs-6相当で大規模施設にも対応します。
・止水パネルシャッター「アクアフラット」
止水性能をもつアルミ製の止水パネルシャッター。最大3mまでの浸水に対応する高水位タイプです。
通常時は管理用シャッターとして使用でき、地下鉄や地下街の出入口に適しています。
・オーニング「パルセイル」
キャスター付きで移動が自由、折り畳み収納が可能な独立型オーニング。
テラス席やリゾート空間はもちろん、一時的な待機場所などに快適な空間を演出します。
武蔵野大学 三坂 育正教授(文化シヤッター株式会社 技術顧問)
【プロフィール】
三坂 育正氏:武蔵野大学 工学部 サステナビリティ学科教授。ヒートアイランド現象を主な研究テーマとし、暑さに強いまちづくりを研究。
「東京オリンピック2020」の暑熱対策に向けた産官学連携の取り組み「涼しいまちづくり研究会」をきっかけに、文化シヤッターグループと共にまちなかの暑さ対策を推進している。
Q.ヒートアイランド現象がもたらす災害の深刻度は?
A.特に大きいのは熱ストレスの影響です。高温や高湿度環境で危険なレベルまで体内に熱がこもり、身体や精神に負担をかける状態になります。
熱中症もその一つです。居住空間や公共施設のみならず、工場などにおける熱中症対策の問題が重要になってきています。そのため、2025年6月1日より、職場での熱中症対策が義務化されました。
Q.暑熱環境を和らげるまちづくりに重要なことは?
A.大きく分けて2つの側面が考えられます。1つ目は屋外空間です。特に公園や街路空間など、人々が日常的に利用する場所においては、対策を施すことで快適な環境を創出し、熱中症のリスクを軽減して活用することが重要です。2つ目は断熱性能の低い建物内への対策です。建物自体の遮熱・断熱性能を高めることで、居住者・勤労者の健康を守る必要があります。
Q.集中豪雨に備えたまちづくりのポイントは?
A.都市ではコンクリートなどの人工被覆化が進むことにより、雨水が地中に浸透せず、ひとたび集中豪雨が発生すると内水氾濫が起こりやすくなっています。特に1階店舗や地下への浸水被害を防ぐため、止水板やシートなどの対策がまず必要になっています。停電時でも機能する、簡易的で電源不要な止水技術が有効であると考えます。
Q.健康・安全・快適を創出する今後の都市のあり方とは?
A.気候変動やヒートアイランド現象が進む中で、都市において生活が困難になることが想定されると思います。その中で、いかにして都市の生活を健康、安全、快適にしていくか、こういったところに視点を置いて研究を続けていきたいと思っています。文化シヤッターさんの技術はその視点に立ったものがあり、発展させていくことで、よりまちの中に使われていくように、研究者の視点から協力していきたいと考えております。
ヒートアイランド現象が深刻化する今日、危険回避のための暑熱対策や水密性の強化は急務です。
しかし、これは単なる防御策ではなく、都市をリノベーションし、新たな価値を創出する好機でもあります。
今後は、エビデンスに基づく確実な対策と実装力を合わせ持つ「産学連携」による都市づくりを、建築業界全体で強力に推し進めていく必要があります。
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